TriCaster Miniで同時に扱える映像ソースは、HDMIが4系統のほか、パン・チルト・ズームのコントロールが可能なネットワークカメラが2系統、内蔵の動画プレーヤー2系統、静止画グラフィックス3系統となっている。
映像の合成は、考え方が多少変わっている。メインのスイッチャー段の上位に、合成用のステージが4つある。それらは、バーチャルスタジオセットの背景と合わせたクロマキー合成にも使えるし、通常のスイッチャーのように映像切り換えやテロップを載せるM/E列としても使える。言うなれば、4つのスタジオセットを切り換えて放送するわけだ。そのほか、テロップなどを載せられるキーヤーが最終段に2つある。
合成した映像は、HDMI端子から出力するほか、内部HDDにレコーディングすることもできる。またTriCaster Miniから直接ネットに対して動画配信することもできる。
TriCaster Miniの特徴は、クロマキーの抜けの良さだろう。簡単な操作でかなり質の良い合成が可能だ。今回はブルーバックではなく、単に青の寝袋の上にぬいぐるみを置いただけだが、標準状態でも結構綺麗に抜ける。輪郭のブルーをキャンセルするなど、細かいところを調整するためにはそれなりに知識と経験が必要になってくるが、そこを頑張るよりも綺麗なブルーバックを用意してちゃんと照明を当てるだけで、綺麗に合成できるだろう。
クロマキー特有の機能としては、「ホットスポット」がある。これはクロマキーで抜けている部分に、特定のエリアを指定しておく。このエリアに何かのオブジェクト、例えば手先が入ってくる、出て行くというアクションを検知して、特定の動作をさせることができる。例えばテロップを順番に出したのち、映像を切り換えるといったことが、出演者自身のアクションで可能になるわけだ。
この機能が搭載されているのは上位モデルだけかと思ったら、最安モデルにも搭載してきた。もちろんうまく使いこなすには、入念な仕込みや打ち合わせといった段取りが必要になるわけだが、手動でやるよりも効果が高い。
上位モデルに比べれば、入力ソース数が限られること、また映像入力がHDMIに限られることから、プロ用のカメラとの組み合わせではうまくいかない。民生機のカメラをうまく活用しながら、プロと遜色ない結果が得られるというのが、TriCaster Miniのポイントである。
ネットのライブ配信は、アマチュアが趣味でやる世界と、B2BあるいはB2Cでやる世界にはっきり分かれてきた。ネット配信を専門にする事業者もあり、それなりにきちんとビジネスとして立ちあがってきている。TriCaster Miniは、そういった事業者が一段上のシステムとして導入する、オールインワンタイプの製品だ。
PCアーキテクチャを利用する割には、あまりPCに詳しくなくても使えるような作りになっている。その代わり映像に対する高度な知識が求められるため、ハードウェアのスイッチャーを一度も使ったことがないという方には、まずわけが分からないシロモノだろう。ただ、入力ソースが少ないため、管理は楽である。これで修行して、上のシステムへステップアップするというのもありだろう。